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睡眠状態の自動判定に新手法―AIで専門家並の精度実現:筑波大学

(2019年11月5日発表)

 筑波大学は11月5日、目覚めているのか、深い眠りの状態にあるのかなど「睡眠ステージ」を脳波と筋電位を用いて自動判定する手法を開発したと発表した。実験動物のマウスを対象に人工知能(AI)の技術を利用して実現した。特定の遺伝子や薬品が睡眠にどのような影響を与えるかを調べるのに役立つという。

 筑波大学の北川博之 計算科学研究センター教授らと、柳沢正史 国際統合睡眠医科学研究機構教授らの研究グループが、人工知能(AI)の手法として注目される深層学習モデルを用いて開発した。

 睡眠は健康な生活を送るために欠かせないが、睡眠がなぜ必要なのかなど未解明な部分が多い。そのためマウスを用いた研究が行われているが、これまで①起きているかウトウトしている覚醒状態、②深い眠りのノンレム睡眠、③夢を見ているレム睡眠、のいずれの状態にあるかは、脳波や筋電位などの生体信号を専門家が目で見て判断していたために多くの時間がかかっていた。

 そこで研究グループは、これまでに蓄積してきた4,200匹分のマウスの実験データをAIに学習させた。具体的にはマウスの脳波や筋電位といった生体信号をもとに専門家が睡眠ステージを判定した結果をAIに学習させ、脳波や筋電位といった生体信号から睡眠ステージを精度よく評価できるようにした。

 新手法を用いた睡眠ステージの判定結果を専門家による判定と比較したところ、96.6%という非常に高い精度で一致した。この結果について、研究グループは「専門家間の判定一致率とほぼ同等だ」として今後、実際の睡眠研究で十分に利用できる精度があると言っている。