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絶滅危惧鳥類の全ゲノムを解読―コウノトリなど3種:国立環境研究所/酪農学園大学/京都大学

(2016年8月5日発表)

 (国)国立環境研究所と酪農学園大学、京都大学の研究グループは8月5日、絶滅が危惧される3種類の鳥類、ヤンバルクイナとタンチョウ、コウノトリのゲノム(全遺伝情報)を解読、その概要を日本DNAデータバンクに掲載し7月1日付けで公表したと発表した。これらの鳥を増やすための交配計画づくりなどに役立つと期待している。

 今回調査の対象にした3種の鳥は、いずれも飼育しながら繁殖させる努力が続けられているが、野生の系統を維持しながら近親交配を避け効率よく繁殖させることが課題になっている。そのため飼育個体の系統や遺伝的多様性をより詳しく評価できるゲノムの解読が必要とされていた。

 そこで研究グループは、鳥から採取した細胞を培養してDNAを抽出、そこに書き込まれている遺伝暗号である塩基配列を調べた。この全塩基配列がゲノムで、生物を特徴づける遺伝子とまだ役割が不明な遺伝情報で構成されている。分析の結果、ヤンバルクイナのゲノムは11億、タンチョウは12億4,000万、コウノトリは13億4,000万の塩基対で構成されていることなどが分かった。

 塩基配列の情報は今のところ多数の断片状になっているため、今後はそれらのつながりなどを調べてより精度の高いデータとして公表する計画。また、他の希少生物10種以上についても、今後5年でゲノム情報を分析して公表していく計画だ。

 ヤンバルクイナは沖縄県北部にのみ生息する全長35cmほどの希少種で、2010年の推定個体数は845~1,350羽。またタンチョウは全長102~147cmの大型のツルで、日本国内では北海道東部に分布、個体数は1,500羽ほどという。コウノトリは全長約110cmの大型の水鳥で国内では一時絶滅、その後の人工繁殖によって現在約90羽が生息している。いずれも種の保存法によって指定された国内希少野生動物種だ。