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イネを倒れ難くするゲノム領域を見つける―スーパー台風に負けない品種の開発に道:東京農工大学/農業・食品産業技術総合研究機構

(2016年7月28日発表)

   東京農工大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構は7月28日、イネの茎を強くして倒れ難くするようにできるゲノム領域を共同で見つけたと発表した。

 東京農工大大学院の大川泰一郎教授と農研機構次世代作物開発研究センターの山本敏央ユニット長の共同研究で得られた成果。

 イネは8~9月の登熟期(米の粒が成長する時期)を迎えると暴風雨などで倒れ、収量や品質の低下をきたす問題を抱えている。最近は、ゲリラ豪雨の多発や大型台風の増加で倒伏被害が拡大の傾向にあり、昨年は台風15号、18号の影響で九州や関東地方のイネの倒伏被害面積が大幅に増えた。

 今年の7月3日、台風観測史上最長の200日間という空白期間をおいて発生した台風1号は、スーパー台風に発達して台湾を直撃、大きな被害をもたらしたが、スーパー台風の上陸が東南アジアのみならず、将来は日本への上陸も予想されている。

 このため、スーパー台風に対しても倒伏抵抗性を備えた稈(かん=イネや竹など中空になっている茎のこと)の部分が強くて多収のイネの新品種の開発が求められている。

 研究は、それに応えることを目指して文部科学省の科学研究費基礎研究「台風に強いイネ品種開発のための強稈・多収遺伝子の集積効果とその発現機構の解明」、農林水産省の「ゲノム情報を活用した農産物の次世代生産基盤技術の開発プロジェクト」の一部として行われた。

 今回研究グループは、強稈性(茎が強く倒れ難い性質)に関わる形質をコントロールするゲノム領域を高精度に特定することに成功した。

 稈の外側には、セルロース、ヘミセルロースなどからできた皮層繊維組織と呼ばれる稈を丈夫にする組織がある。

 コシヒカリなどの食味の良い日本型のイネは、稈が細い弱点がある一方皮層繊維組織が厚いという特性を持っている。

 それに対し、インドの代表的な品種の一つタカナリなどの多収品種は稈は太いが皮層繊維組織が薄く脆い性質を持つ。

 研究は、コシヒカリとタカナリを交配して行われた。

 その結果、皮層繊維組織の厚さをコントロールするゲノム領域があることが分かり、倒れ難くする強稈性を支配する重要な形質が精度高く測定できるようになった。

この成果は、稈が細く倒れ易い日本型イネの倒伏改良だけでなく、稈は太いが折れ易いインド型のイネの改良にも役立つものと研究グループは見ている。

 今後は、海外の国際イネ研究所、国際トウモロコシ・コムギ研究センターなどと連携して世界のイネ、コムギ品種の倒伏抵抗性の改良を推進していく予定といっている。