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鉄リン系超伝導体で反強磁性磁気ゆらぎを発見―予想より15倍高いエネルギー領域で見つかる:総合科学研究機構/日本原子力研究開発機構/ J-PARCセンター

(2018年11月2日発表)

 鉄系超伝導体の発見以来、鉄系超伝導体の超伝導発現には「反強磁性磁気ゆらぎ」と呼ばれる現象が密接にかかわっていて、反強磁性磁気ゆらぎのエネルギーが高いほど鉄系超伝導体の超伝導転移温度は高くなると考えられてきた。

 ところが、鉄系超伝導体の一つである鉄リン系超伝導体(LaFePO)は超伝導転移温度が5K程度と低く、米国や英国の先行研究で反強磁性磁気ゆらぎが、期待されるエネルギー領域で見つからなかったため、鉄リン系超伝導体には反強磁性磁気ゆらぎは存在しないと信じられてきた。

 研究グループは今回、高品位の鉄リン系超伝導体を大量に合成、この試料を用いて、反強磁性磁気ゆらぎの有無を、これまで見過ごされてきた高いエネルギーまで観測領域を広げて詳細に調査した。

 その結果、予想よりも約15倍程度高い約40meVのエネルギー領域に反強磁性磁気ゆらぎが存在することを見出した。

 研究グループは今後、高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎが鉄リン系超伝導体の超伝導とどうかかわっているのかを調べ、鉄リン系超伝導体の超伝導メカニズムの解明につなげたいとしている。