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農業用遮水シートの50年間の耐久性を確認―実際の長期試験で、初期の約8割の性能を保持していた:農業・食品産業技術総合研究機構

(2018年11月1日発表発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月1日、農業用貯水池に使われてきた遮水シートの耐久性を調べた結果、50年前の使用開始時と比べて8割程度の性能を保持していたと発表した。遮水シートを使った貯水池や水路の中では紫外線や温度変化が穏やかなために、長期間にわたって品質が保たれたものと評価している。

 国内の農村には、たくさんの水路やため池・貯水池(約20万か所)がある。そこでは水漏れや水流を良くするために多くは合成ゴム系の遮水シートが使われている。ブチルゴム(75%)とエチレンプロピレンジエンモノマー(25%)で製造されたもの。

 農研機構農村工学研究部門の前身の農業土木試験場は、1967年から合成ゴム系の遮水シートの耐久性試験に着手した。超長期の耐久性評価は公的研究所ならではの基礎的な仕事で、定期的なサンプリング試験の結果はその都度学会や業界向けに報告してきた。

 ちょうど50年目に当たる2017年に、貯水池底面に使われてきたシートの強度などを測定し、使用開始時との比較をした。

 その結果データにばらつきはあるものの、引っ張って切れるまでに要した最大の力(引っ張り強さ)は長手方向が8.0N(ニュートン)、幅方向7.6N(いずれもmm2あたり)で、規定の試験片を引き裂くのに要する最大の力(引き裂き強さ)は長手方向31.5N/mm、幅方向28.4N/mmだった。

 これは農業改良事業の設計指針に使われている加硫ゴム系シートと比較すると、破断時伸び以外の項目は品質規格を満足し、機能性は概ね保たれるとの結果が出た。使い始めてから30年以降は、劣化は緩やかに進むことも明らかになった。

 こうした基礎的なデータ取得は地味な仕事だが、将来のシート類の製造、建設費や補修費の低減、維持・管理などに使うことが可能で、公共事業費の節約につながるものと期待している。