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有機トランジスタ製の多値論理演算回路を開発―フレキシブルエレクトロニクスの高性能化に道:物質・材料研究機構

(2018年7月2日発表)

 (国)物質・材料研究機構は72日、2種類の有機トランジスタから成る多値論理演算回路を開発したと発表した。高集積化による性能向上が困難だった有機トランジスタの弱点を克服し、計算機能の大幅な向上に寄与することが期待されるという。

 高分子を素材とした有機半導体製のフレキシブルエレクトロニクスは、あらゆる物をインターネットで結合するIoT社会で主要な役割を担うと期待されている。しかし、その実現には、素子の微細化による高性能化が望めない有機トランジスタの、データ処理能力の飛躍的な向上が欠かせない。

 研究グループは今回、「アンチ・アンバイポーラートランジスタ」という、新しい原理で動作するトランジスタを作製し、高集積化への道を開いた。

 アンチ・アンバイポーラートランジスタは、ゲート電圧を一定以上に増加させるとドレイン電流が減少するという特殊なトランジスタで、これと通常のトランジスタとを組み合わせて、3つの値をスイッチできる素子を開発した。

 ゲート電圧が低の時はアンチ・アンバイポーラートランジスタに多くの電流が流れ、そこから少し電圧を高めると2つのトランジスタに同程度の電流が流れ、ゲート電圧を高にするとアンチ・アンバイポーラートランジスタに流れる電流が減少する、というように3つの値をとる。

 これにより、複数の出力値を制御する多値論理演算回路が作れ、旧来のトランジスタと同程度のサイズのトランジスタで、集積度とデータ処理能力の大幅な向上が期待できるという。フレキシブルエレクトロニクスの新しい可能性が開けたとしている。