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苦みの少ないサニーレタス―植物工場で栽培環境と味の関係解明:筑波大学ほか

(2018年6月26日発表)

 筑波大学と(株)キーストーンテクノロジー、(国)理化学研究所は626日、植物工場で土壌なしで栽培したサニーレタスは土壌栽培したものよりもうま味成分が多く苦み成分は少ないことが分かったと発表した。LED(発光ダイオード)の人工光を用いた実用植物工場で同じ液体肥料を用いて栽培、中に含まれる成分等を比較分析して明らかにした。

 植物工場は、植物の生長に重要な温湿度、光、培養液等を制御した閉鎖環境下で野菜を育て、天候に左右されない安定的な出荷を実現している。ただ、生産コストが高くなるため、味や栄養成分などで付加価値をどう高めるかが課題になっている。

 筑波大の草野都教授らの研究グループはサニーレタス2品種(ブラックローズとレッドファイヤー)を対象に、①青(波長460nm、ナノメートルは10億分の1m)、緑(525nm)、赤(660nm)3色のLED光と液体肥料を用いた植物工場、②白色LED400800nm)と同じ液体肥料を用いた土壌で、それぞれ33日間かけて栽培した。光の強度などは同じ条件にした。

 育ったレタスの葉を比較したところ、植物工場栽培では土壌栽培に比べて品種特有の褐色は見られず、葉の形も異なっていた。さらに、植物体内の成分を質量分析計やNMR(核磁気共鳴)などを用いて詳しく分析したところ、味に関連するアミノ酸や糖など約300種類の成分を検出。このうち特に、うまみ成分であるアミノ酸量は植物工場栽培の方が土壌栽培に比べて多かった。反対に、レタス特有の苦み成分「セキステルペンラクトン類」の含有量は低かったという。

 今後、照射する光や液体肥料の組成などが野菜の成分にどう影響するかを、さらに詳しく解析していけば、野菜の味や機能性を好み通りに変えていくことにも道がひらけると、研究グループは期待している。