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ツキノワグマは“木を見て森も見て”ドングリを探してる―森林全体の結実状況に応じ登る木を厳選:東京農工大学/森林総合研究所

(2018年6月7日発表)

 東京農工大学と(国)森林総合研究所は6月7日、ツキノワグマは“木を見て森も見て”餌のドングリを探していることが分かった、とする研究結果を共同で発表した。

 ツキノワグマは、木に登り好物のドングリを採って食べる。その際、樹上に「クマ棚」と呼ばれる折れた枝が積み重なって鳥の巣のような形になった採食痕跡を残すことが知られている。

 しかし、クマにとって木登りは体力を使う行動であり、樹上での採食行動には不明な部分が多く残されている。

 今回の研究は、クマがどのような結実状況の時に木に登ってドングリを採って食べるのかを明らかにすることを目的に実施したもので、ドングリが実るミズナラ、コナラ、クリの3樹種を対象にクマ棚と結実量の関係を調べた。

 調査を行ったのは、栃木県・群馬県にまたがる足尾・日光山地。実施したのは2008年から2014年にかけてで、371481本の調査木の毎年のドングリの結実量とそれぞれの木へのクマ棚形成の有無、地域全体の結実状況を調べあげた。

 その結果、3つの樹種いずれにおいてもドングリが多く実った木でクマ棚は形成され易く、地域の森林全体が凶作の年には普通の年には見向きもしないような結実の少ない木にも登ってクマ棚を作っていることが分った。

 こうしたことから、クマはエネルギーのいる木登りをやみくもにしてドングリを採食しているのではなく、効率良く食物を得るため、木を見ると共に森も見て地域の森林全体の結実状況に応じて登る木を厳選していると研究グループは結論している。