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人工知能の機械学習に新計算方式―訓練処理5倍に高速化も:産業技術総合研究所

(2018年5月29日発表)

 (国)産業技術総合研究所は529日、学習訓練をもとに推論・識別能力を身につける人工知能の機械学習を最大で5倍に高速化できる技術を開発したと発表した。機械学習の訓練時間を短縮する新しい計算方式をシミュレーションで確認した。今後はハードウエアを試作して実現可能性を検証し実用化を進める。

 機械学習では、大量のデータを学習する訓練処理と、入力情報を処理して識別結果や将来予測を出す推論処理で構成される。このうち推論処理の高速化手法はさまざまに開発されているが、訓練処理の高速化については決定的な手法がなかった。

 そこで産総研はこの訓練処理に注目、その高速化を試みた。通常、訓練処理には32ビットか16ビットの数値計算が使われているが、今回初めて9ビットの数値計算を採用、必要な乗算・加算の精度を維持したまま訓練時間を大幅に短縮化する回路を考案した。数値シミュレーションによる実験で回路の性能を確認したところ、消費電力あたりの訓練処理能力が従来方式の約5倍に向上することが分かった。

 新しく考案した回路をコンピューターや機械学習専用プロセッサーに組み込むこともできる。その結果、例えばネットショッピングの顧客に最良の商品を提案できるようにする買い物履歴の学習が、従来よりも短い時間で実現できるという。