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海流形成の新しいメカニズム発見―深海底の緩やかな起伏が影響:北海道大学/海洋研究開発機構/大分大学/国立極地研究所/水産研究・教育機構/気象研究所など

(2018年5月9日 発表)

 北海道大学、気象庁気象研究所などの研究チームは59日、水深約5,500mの深海底にある緩やかな起伏が海表面の海流をコントロールしていると発表した。好漁場として知られる北海道東方沖1,000kmの海域を流れる海流「磯口ジェット」の形成メカニズムを初めて解明した。同様の海底地形は世界中の海域に存在しており、海洋学や水産学、気候学の進展にも役立つと期待している。

 北大低温科学研究所の三寺史夫教授らが(国)海洋研究開発機構、大分大学、気象研究所など6機関の協力を得て明らかにした。

 磯口ジェットは2000年代になって発見された暖かい黒潮を源とする海流で、南西から北西へ流れている。北海道沿岸を北東から南西へ流れる親潮との間で水温が大きく変化する水温前線を作っており、マイワシなどの好漁場を形成しているほか、北半球規模の気候変動の原因にもなっている。

 これまで磯口ジェットの形成メカニズムはナゾとされていたが、今回の研究で従来は無視できると考えられていた背が低く起伏の少ない海底地形「海膨」が、この海流形成に大きな役割を果たしていることが分かった。推進約5,500mの深海底における500m程度の低く緩やかな海底地形「北海道海膨(かいぼう)」が、海水中にできる渦と海底地形の相互作用を通して海洋表層部に効率的に海流を作り出しているという。

 北海道海膨に似た緩やかな起伏は世界の多くの海にある。このため研究チームは今後、単純化した地形を用いた理論的な研究に取り組んで海流形成メカニズムの一般化を進め、他の海域についても理解できるようにしたいとしている。