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AIを使った「災害時SNS情報分析」のガイドラインを策定―迅速、的確な災害情報の把握と、救援活動の優先の判断に役立てる:慶應義塾大学SFC研究所/情報通信研究機構/防災科学技術研究所

(2018年4月12日発表)

 慶應義塾大学SFC研究所と(国)情報通信研究機構、(国)防災科学技術研究所は412日、災害発生時にあふれる膨大なSNS情報を、人工知能(AI)を使って迅速、効率的に分析し、救援活動の優先順位の判定などに使えるようにした「訓練ガイドライン」を作成し、公表した。ネット上のSNSでは日常的な「ことば」でやりとりされているが、この情報をコンピューターに処理させる自然言語処理によってガイドラインを作ったのは世界でも初めて。

 2011年の東日本大震災当日のTwitter投稿数は約3,300万件に上り、FacebookLINEなどを含めると数千万件以上になったとみられている。こうした情報を的確につかめれば、各地の災害状況を遠隔地でも正確、迅速に把握できる。救援の際の優先順位の判定にも活用でき有用性が高い。

 しかし自治体などの限られた人数の職員では、膨大なSNS情報の中から重要な情報だけ迅速に選び出すのは不可能に近い。そこで既に実用化されている自然言語処理技術(AIの一種)による「SNS情報分析システム」を防災訓練に生かすことになった。実際に災害が発生し切迫、混乱していても、システムを間違いなく使えるようにするのが狙い。

 訓練での情報分析システムの運用の主な流れは次のようになる。

 ①   被害想定を参考にしながら「〇〇で火災発生」や「避難所がいっぱいです」などの投稿パターンを事前に用意しておく②訓練の時間経過に合わせて変化する状況を自動的にSNSに書き込み、情報掲示板(SNS)に掲げる③集まったビッグデータをシステムで分析する④整理、要約された情報を担当職員が把握する⑤分析結果を確認して都道府県の災害対策本部に上げ、災害救援の指揮や統制に使う。

 これによって臨場感のある災害情報が効果的に集められ、整理や分析が自動化されることで、被災地に飛び交う数十万件から数百万件のSNS情報をデジタル処理できるとみている。

 職員の負担が軽減され、避難所状況などをリアルに把握できることから、実践的な図上訓練ができるものと想定している。