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白金不要の低コスト新型電極開発―水の電気分解で水素生産も:筑波大学ほか

(2018年3月30日発表)

 筑波大学と大阪大学、東北大学は330日、クリーンエネルギーである水素を水の電気分解で効率よく作れる低コストの新型電極を開発したと発表した。白金などの高価な貴金属の代わりにニッケルなどの安価な卑金属(ひきんぞく)を用い、その表面を炭素の単原子膜「グラフェン」で覆って酸性電解液中で腐食しにくい電極にした。量産性にも優れており、燃料電池や蓄電池などにも広く応用できると期待している。

 研究グループは、電気分解法として高純度の水素を効率良く得られる固体高分電解質膜(PEM)に注目。この方式に不可欠な強酸性電解液中でも、腐食に強い白金電極の代わりに使える安価な新型電極の開発を目指した。

 このため、強酸性の電解液で溶け易い卑金属表面をグラフェンで覆って溶けにくくすることを目指した。ただ、完全に覆ってしまうと電気分解に不可欠な卑金属と水素イオンが直接触れ合う場がなくなるため、研究グループは卑金属の表面をナノ(10億分の1m)サイズの穴があいたグラフェンで覆う工夫を試みた。

 まず卑金属合金の酸化ニッケル・モリブデンを極細のナノファイバーにし、ナノサイズのシリカ(酸化ケイ素)粒子と混ぜてシート状に固め、水素雰囲気下で加熱した。その結果、グラフェンの成長がシリカ粒子のある部分でだけ阻害され、ナノサイズの穴が沢山あいた多孔質卑金属電極ができた。

 多数のナノサイズの穴があいているため、単純な二次元表面に比べると10倍近い表面積が確保できた。その結果、水の電気分解に必要な水素イオンの流路と反応の場が十分に確保でき、白金電極に比べても優れた水素発生能力を持つ見通しが得られた。耐久性の点でも、裸のニッケル・モリブデン電極では1,000回の繰り返しで電極が溶けてしまったが、新型電極では68%の性能が維持できたという。

 この結果について、研究グループは「ナノサイズの穴があいたグラフェンで卑金属表面を覆うことで、電極としての寿命と性能を両立させられる指針が得られた」と言っている。