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稲・野菜の二毛作地域に適した水稲の新品種を開発―早生(わせ)で、今の品種より10%多収:農業・食品産業技術総合研究機構

(2018年2月19日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は219日、二毛作に適した早生で多収の水稲を開発したと発表した。

同機構九州沖縄農業研究センター(熊本県 合志市)の研究成果で、品種名は「歓喜の風」。「普及先の農家が待望の品種が出来たことに歓喜する姿を想起して名付けた」と同機構はいっている。

 二毛作は、一つの耕地で1年に2種類の農作物を作る栽培方式のこと。関東以西の稲・野菜二毛作地域は、早生の稲の栽培が多い地域の一つで、現在「キヌヒカリ」と呼ばれる早生の水稲が広く栽培されているが、近年の温暖化に伴い玄米の外観品質の低下が問題になっている。

 これに対応しようと、高温に強く、玄米の外観品質低下の少ない早生で良質・多収の水稲を目指し開発したのが今回の新品種。「キヌヒカリ」より約10%多収で、炊いたご飯の味が良く「コシヒカリ」などに近いという。倒れ難い「ふくいずみ」と、極早生・多収で玄米の外観品質が優れる「越南208号(後の「あきさかり」)」を交配して育成した。

 二毛作では、一般に冬春の野菜作りで多量の肥料を投入するためそれが土中に残りやすく、残った肥料成分の影響で後に作る稲が倒れやすくなったり、得られる米の味が低下したりする場合があるが、「歓喜の風」は一定程度の多肥条件でも栽培できるという。

 同機構は、関東以西の広い地域で多収の早生品種として栽培できるとしており、「静岡県では現在約500ha500万㎡)の普及を見込んでいる」といっている。