[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

耐久性、経済性に優れた耐熱Oリングを開発―技術移管先企業が2018年度中に製品化:産業技術総合研究所

(2018年2月8日発表)

 (国)産業技術総合研究所は28日、耐久性と経済性に優れた実用的な耐熱Oリング(オーリング)を開発したと発表した。

 フッ素ゴムとカーボンナノチューブの複合化で実現したもので、技術移管先企業が2018年度中に製品化する予定という。

 Oリングは、気体や液体を密封するのに使われるリング状のシール部材のこと。材料は、ゴム。

 工業プロセスなどの高温化に伴いOリングに求められる温度も上がり、それに応えるため現在280℃程度まで使えるFFKMと呼ばれる特殊なフッ素ゴムを使ったOリングが市販されている。

 しかし、FFKM製は非常に値段が高く、一般の150~200℃まで使える耐熱性フッ素ゴム(FKM)製Oリングの5~10倍以上もする。

 こうしたことから、FKM製より高い温度で使える安価な耐熱Oリングが求められている。

 今回開発した耐熱Oリングは、FKMに「スーパーグロース法(SG法)」という方法で合成した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を分散させて得たもので、ベースが安価なFKMなのに230℃での強度がFFKMベースの市販品より優れ、長時間経過後もその強度が変わらないことを確認している。

 カーボンナノチューブは、炭素原子が網目のように結合した直径が0.4~50nm(ナノメートル、1nm10億分の1m)の超微細なチューブ状の物質で、網目(六員環)が1層(単層)なのがSGCNT。産総研開発のSG法は、そのSGCNTの合成法として注目され、日本ゼオン(株)が2015年から量産している。

 産総研は、2017年から企業と連携して新耐熱Oリングの実用化研究を進めてきたが開発した低コスト量産プロセスにより製造コストを検討開始前の2分の1以下に出来ることが分ったといっている。