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半導体型CNTの高純度分離に成功―印刷エレクトロニクスへの応用に道:日本電気/産業技術総合研究所ほか

(2018年2月8日発表)

 日本電気(株)と(国)産業技術総合研究所、(株)名城ナノカーボンは28日、単層カーボンナノチューブ(CNT)のうちの半導体型CNTだけを、非イオン性分散液を使って高純度に分離できる技術を開発したと発表した。高性能トランジスタの印刷製法に道を開く成果という。

 単層CNTは炭素原子でできたナノカーボン材料の一種で、直径約1nm (ナノメートル、1nm10億分の1m)、長さ数µm (マイクロメートル、1µm100万分の1m )のチューブ状物質。炭素の並び方の違いによって半導体型と金属型の異なる物性を示し、両者は単層CNT生成時に21の比率で存在する。

 このうちの半導体型CNTは印刷技術を使って電子回路などのエレクトロニクス製品を生産する材料として注目されているが、単層CNT生成時の混在状態から半導体型のみを高純度で分離するにはこれまでイオン性界面活性剤などを使わなくてはならず、デバイスの動作が不安定になるなどの課題があった。

 研究グループは今回、「電界誘起層形成法(ELF法)」という、イオン性界面活性剤を用いない分離法を開発、99%以上の高純度で半導体型CNTを分離することに成功した。

 開発したELF法は、単層CNTを非イオン性界面活性剤で分散し、その分散液を分離装置に入れ、上下に配置された電極に電圧を印加して分離する仕組み。安定的に分離できる。

 この技術で分離・製造した半導体型CNTを溶かした高機能性インクを使って電界効果トランジスタを作製、評価したところ、良好な均一性を持つデバイス性能が得られたという。印刷エレクトロニクスで高性能なトランジスタの安定的な作製に道を開く成果という。

 2018年度に名城ナノカーボンが高純度半導体型CNTのサンプル販売を開始し、国内外の企業、大学、研究機関などに販売するとともに、共同で用途開拓を進めたいとしている。