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自動車の木質内装品作る新技術を開発―共同研究進めて数年以内の製品化目指す:産業技術総合研究所ほか

(2018年2月5日発表)

 (国)産業技術総合研究所と岐セン(株)は25日、共同で木材をプラスチックや金属のように熱と圧力によって成形し自動車の木質内装品を作る技術を開発したと発表した。

 産総研は、企業などと共同してこの技術をさらに発展させ「数年以内での製品化を目指す」といっている。

 木材は、セルロース、ヘミセルロースとリグニンからできていて、鉄筋コンクリートに例えて、セルロースが鉄筋、ヘミセルロースが鉄筋を結ぶ針金、リグニンがセメントに相当するといわれている。

 この例えのような構造をしているがために木材はプラスチックや金属のようにプレスなどで力を加えて目的の形状に加工する塑性加工ができない。

 産総研は、この壁を破ることを目指して「木質流動成形」という方法を見つけ、2011年に基本特許を取っており、今回の技術はその木質流動成形を使って得た。

 木材に樹脂を浸透・含浸させて特定の温度・圧力を加えると細胞間にすべり変形(流動現象)が生じて成形体が得られるというのが木質流動成形の原理。

 新技術は、金属製品をプレス成形するように木質流動成形による塑性加工により高い生産性で最終製品の形状をした木材成形品を作ることができる特徴を持っている。

 産総研は、この技術を使い自動車部品メーカーと共同で自動車内装用木質意匠パネルの試作に成功しており、引張ヤング率535GPa(ギガパスカル、1G10億)、引張強度30250MPa(メガパスカル、1M100万)程度の範囲で機械的性質を制御でき、大半の自動車内装品に使われている汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックと同等以上の性能を付与できることを確認している。

 産総研は、今後の展開について「自動車部材としての採用を目指した共同研究を進めて、数年以内での製品化を目指す。また、日用品や情報家電、建築関係部材などその他の用途への展開を具現化できるパートナーを探索する」といっている。