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二次電池の高容量化と長寿命化を両立する新材料を開発―層状の酸化マンガンとグラフェンを交互に積層し実現:物質・材料研究機構

(2018年1月25日発表)

 (国)物質・材料研究機構は125日、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池の性能を高められる負極用の新材料を開発したと発表した。充放電容量は従来の2倍以上あり、繰り返し使っても容量の減らない長サイクル寿命性能を持つ。二次電池の高容量化と長寿命化の両立が期待できるという。

 開発した新材料は、高い理論容量を持つ物質として注目されてきた遷移金属酸化物の一種の酸化マンガンを利用したもの。

 酸化マンガンを分子一層のナノシート状構造にして負極材料として使うと、表面すべてが活性部位となるため、大きな容量が期待できる。しかし、酸化マンガンは充放電を繰り返すと構造が壊れやすいなどの問題を抱えている。

 研究チームは今回、酸化マンガンのナノシートと、黒鉛(グラファイト)から剥離したシート状のグラフェンを溶液中で混ぜ合わせ、一層ずつ交互に積層したミルフィーユ構造の複合材料を合成した。グラフェンの帯電状態を正に変える処理を施すことにより、負に帯電した酸化マンガンナノシートとの自己組織化的な積層に成功した。

 この複合材料を負極活物質として用い、性能を評価したところ、可逆的な充放電が可能であり、カーボンを負極とする現行のリチウムイオン電池の負極容量の2倍以上の高い容量が認められた。また、5,000サイクル充放電しても、リチウムイオン電池のサイクル当たりの容量減少はわずか0.004%であった。

 酸化マンガンをグラフェンで挟むことで、充放電によって壊れやすい酸化マンガンの構造が保持されるとともに、電極材料全体の電導性がグラフェンにより改善されたことが性能向上の要因という。

 今回の成果は二次電池の性能向上だけではなく、各種エネルギー関連システムの性能向上への貢献が期待されるとしている。