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縞葉枯病に強い飼料用イネの新品種を開発―牛用の発酵粗飼料を作るのに好適:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年10月3日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は103日、縞葉枯病(しまはがれびょう)に強い発酵粗飼料用イネの新品種を開発したと発表した。

 縞葉枯病は、イネ縞葉枯ウイルスによって引き起こされ、イネの害虫のヒメトビウンカによって媒介される病害で、関東地域以西の広い範囲で増加傾向にある。新品種は、縞葉枯病多発地域でも栽培できる牛用発酵粗飼料向けのイネを実現しようと開発した。

 日本の飼料自給率は、低く26%前後で推移している。発酵粗飼料用イネは、その自給率アップに寄与し、米作が行なわれていない水田の有効利用策になることから注目されている。

 牛用の発酵粗飼料は、イネの子実(種子)が完熟する前に子実と茎、葉を一緒に収穫して発酵させ、貯蔵するという方法により作るが、問題なのが籾(もみ)。イネの籾は消化が悪いので牛からそのまま排泄され易く、それだけ栄養分をロスすることになるため籾の少ない品種が求められている。

 また、籾の多い品種には、発酵の際の乳酸菌のエネルギーになる糖分が少ない弱点のあるものが多い。

 こうした問題に対応しようと農研機構は、2010年に籾が少なく、糖の含有率の高い良質の発酵粗飼料用イネ「たちすずか」を開発、現在普及が進んでいるが、縞葉枯病に弱いという難点があり、縞葉枯病の多発地域で栽培するには縞葉枯病を抑えるための農薬がいる。

 農研機構は、今回その課題解決を目指し「たちすずか」の優れた特性と、縞葉枯病に対する強い抵抗性を併せ持った新品種を開発した。

 新品種の名称は、「つきすずか」。「たちすずか」と縞葉枯病に強い「ホシアオバ」に由来する系統を交配して得た。

 群馬県内の縞葉枯病多発地域で行った「つきすずか」の現地栽培試験では、「たちすずか」と比べ、①発病が明らかに少ない、②糖の含有率が同程度、➂籾の量が半分以下、という生育特性が得られたとしている。

 同機構は「関東以西で栽培できる。縞葉枯病の多発地帯である北関東の稲麦二毛作地帯で600ha(ヘクタール)程度の栽培が見込める」といっている。