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世界最高性能の誘電率を持つ誘電体ナノシートを開発―大きさ1/100で容量1,000倍のコンデンサ実現へ:物質・材料研究機構

(2017年8月3日発表)

 (国)物質・材料研究機構は83日、高誘電体として知られる層状ペロブスカイト構造を持つナノシートを作製し、原子レベルで層構造を制御することにより、膜厚10nm(ナノメートル、1nm10億分の1m)以下のナノスケール領域において世界最高性能の誘電体膜を開発したと発表した。この成果を用いると、従来の高誘電体に比べ1/100の大きさで1,000倍以上大容量のコンデンサ素子の開発が期待できるという。

 誘電体は、電圧をかけるとその電圧に応じて電荷を蓄えたり、直流電圧に対しては電気を通さない性質を持つ材料。コンデンサやメモリなどに用いられているが、近年ナノスケールの薄さでも高い誘電率を示すシート状の誘電体を用いて高性能なコンデンサを開発することが期待されている。

 研究グループは今回、層状ペロブスカイト構造を持つ物質を用いて、世界最高の誘電率を持つ誘電体ナノシートの開発に成功した。

 ペロブスカイト構造は、結晶構造の一種で、銅酸化物高温超電導体やチタン酸バリウム(BaTiO3)誘電体などにみられる構造。この構造の酸化物(Ca2Nam-3NbmO3m+1m=3-6)に化学処理を施し、まずペロブスカイトナノシートを合成した。次に、水溶液プロセスを用いたナノの積木細工でシートを1層ずつ精密に積み重ね、原子レベルで化学組成と構造を精密に制御した単層膜、多層膜を作製した。

 これらの膜の特性を調べたところ、この誘電体は原子レベルでの構造制御により誘電率をコントロールできるというユニークな特徴が認められた。単位ユニットに相当する金属酸素八面体を1個増やすことで誘電率が約80ずつ増加し、八面体が6個の6層型誘電体では、膜厚10nm以下のナノスケール領域で安定な誘電特性、絶縁性を示し、世界最高の誘電率470が得られた。

 当面の開発目標である誘電率500の実現に重要な設計指針を与える成果で、この指針に基づき今後、小型大容量の高性能コンデンサ素子の開発が期待できるという。