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世界最高速のMRIシミュレータを開発―コンピュータ上で撮像プロセスを忠実に再現:筑波大学

(2017年5月25日発表)

 筑波大学は525日、コンピュータ上でMRI(磁気共鳴画像法)の撮像プロセスを忠実に再現する世界最高速の「MRIシミュレータ」を開発したと発表した。(株)エム・アール・テクノロジーと共同で開発したもので、医療の現場で撮った臨床撮像の結果とほとんど区別できない画像を得ることができるという。

 MRI装置は、強い磁場と電波を使って人間の臓器や血管の断面画像を撮影する装置。最先端の医療診断装置として世界中で広く使用されており、日本では約6千台が日常の診断業務に用いられ病変の早期発見や診断に大きく貢献している。

 しかし、MRI装置の世界市場は、欧米の三大メーカーが80%以上を占め、日本メーカーのシェアは15%に満たない状況にある。

 その理由の一つとして挙げられているのが、ソフトウェアの遅れ。MRIのハードウェア、つまり装置そのものでは、日本メーカーも海外メーカーに遅れていないが、MRIを動作させるためのタイミングなどの情報を記載したパルスシーケンスと呼ばれるソフトウェアにあたる撮像手法の開発は肩を並べているとは言い難い状況にあるといわれる。

 今回の成果は、そうした背景の下、MRIの撮像プロセスをコンピュータ上で忠実に再現する世界最高速の実用的MRIシミュレータを作り上げた。MRI撮像に使用するパルスシーケンスをそのままシミュレーションに利用でき、撮像結果とシミュレーション結果との直接比較を可能にした。

 開発にあたったのは、同大学数理物質系の巨瀬勝美教授とエム・アール・テクノロジー社の研究グループで、米国の半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)社製のGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)を2台使って実現した。

 実証試験では、従来の約70倍にあたる約7TFLOPS(テラフロップス、1TFLOPS1秒間に浮動小数点演算を1兆回実行する演算速度)の世界最高速を記録、臨床撮像に広く使われているマルチスライス法という撮像法の撮像結果とほとんど区別できない画像が得られることを確認した。

 筑波大は「MRIシミュレータは、理想的なMRI装置をコンピュータ上に構築できることから、今後MRI開発で中心的な役割を果たしていくことが期待される」といっている。