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東アジアの陸上生態系における二酸化炭素吸収に増大見られず―新輸送モデルで炭素収支の整合性の問題解く:海洋研究開発機構/国立環境研究所

(2017年5月16日発表)

 (国)海洋研究開発機構と(国)国立環境研究所の研究グループは516日、海洋研機構が独自に開発した大気化学輸送モデルなどを使って温室効果ガスの排出吸収量を解析した結果、2000年代の東アジアの化石燃料消費による二酸化炭素(CO2)は過大評価されている可能性があり、このバイアスを補正すると、近年報告された東アジアの陸上生態系によるCO2吸収量の増大は見られないことが明らかになった、と発表した。

 東アジア地域(中国、日本、韓国、モンゴル)における陸域生態系のCO2吸収量については、近年7つの最新大気輸送モデルを使った解析が行われ、1990年代末から2010年ごろにかけて年間約0.56PgC(炭素換算0.56ペタグラム、ペタは1015)増加している、との結果が得られている。ただ、中国のCO2排出量の推定値には不確実性が大きく、東アジアのCO2収支の整合性追究が課題視されていた。

 研究グループは今回、CO2の大気観測データと独自開発の大気化学輸送モデルを用いて、2002年から2012年までのCO2排出吸収量を、3種類の化石燃料起源のCO2排出量データベースを用いて推定した。その結果、化石燃料起源のCO2排出量の違いの大きい東アジアで推定CO2排出吸収量のバラツキも大きくなることを確認した。

 つまり、これまでの研究で得られたCO2吸収量の増加は、化石燃料起源のCO2排出量が過大評価されていることに起因する可能性が示唆された。

 さらに研究グループは、化石燃料起源のCO2排出量の補正方法として、メタンガス(CH4)の解析結果を用いる新たな手法を考案、それを用いた解析によると2000年代におけるCO2吸収は増大していないという結果が得られたという。

 これらの研究成果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)やグローバル・カーボン・プロジェクトの活動への貢献が期待できるという。