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乳幼児や若い女性、高齢者に、ビタミンDを補う日光照射の勧め:国立環境研究所

(2017年4月10日発表)

 (国)国立環境研究所の地球環境研究センターは410日、国民のビタミンD不足を補うために地域ごとの適切な日光照射時間の目安をウェブサイトで公表しているが、そのサービス地域をこれまでの5か所から10か所に拡大したと発表した。紫外線の持つ有益性と有害性の相反を数値化して、地域ごとに最も適切な「日光の照射時間」を毎日ほぼリアルタイムで提供している。

 紫外線は、日焼けやしみ、そばかすなどの生成につながり、皮膚がんの心配もあることから、最近は極力避ける傾向が強まっている。そのためにややもすると体内でビタミンDを生成する大事な働きが見落とされがちになっている。

 ビタミンDの成人の必要摂取量は1日約15㎍(マイクログラム、1㎍は100万分の1g)とされ、日本人の成人の多くは魚や卵黄、シイタケなど一部の食品から必要量の約3分の1を摂取し、残りは太陽紫外線で補っているとみられる。

 ところが、日本人はビタミンD不足に陥っているとの報告が多く出されるようになった。不足すると、骨へのカルシウム沈着障害が発生し、幼児の頭蓋ろうや骨格発達期のくる病、高齢者の骨軟化症や骨粗しょう症などにつながるほか、大腸がんなど各種のがんにかかりやすくなるリスクも指摘されている。

 どの程度の紫外線を浴びればビタミンDの生成に役立ち、どの程度以上になると皮膚にとってリスクとなるかは、季節や地域、時間によって刻々と異なる。散歩や外出、スポーツなどの際に、適切な照射時間を知る目安が地球環境研究センターのホームページに紹介されている。

 例えばビタミンD生成・紅斑紫外線量情報のホームページ、横浜局をクリックすると、対数グラフに赤、青、緑の3色の曲線が現れる。赤線は有害な紫外線の照射時間の限度で、青線は顔と両手を露出した程度で、10㎍のビタミンDを生成するのに必要な時間、緑線は軽装状態で浴びた時に10㎍のビタミンDを生成するのに必要な時間が示される。

 グラフで赤が50分を表示しているなら、それ以上浴びるのは危険だ。緑の9分から赤の50分以内が日光照射の目安となる。

 紫外線の影響は、皮膚の色が白い民族が過敏になっているが、研究者によると「日本人はさほど過敏になることはない。むしろ紫外線を避けることによるビタミンD不足の影響の方が深刻になるだろう」と、紫外線照射の勧めを説いている。