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強誘電体のナノサイズ局所構造解明する手法を開発―巨大圧電効果示す「リラクサー強誘電体」で実証:筑波大学ほか

(2017年3月21日発表)

 筑波大学と島根大学は3月21日、共同で強誘電体の一種「リラクサー強誘電体」のナノサイズ極性領域と呼ばれる局所構造を解明する手法を開発したと発表した。

 電場内に置かれた物質は、プラスとマイナスに分極する。それに対し電場がなくても自発的に分極している物質のことを強誘電体といい、センサーやメモリー、太陽光発電など広い分野にわたって利用されている。

 リラクサー強誘電体は、分極の強弱を示す誘電率が非常に高く、巨大な圧電効果(力を電圧に変換する現象)を示す強誘電体のことで、巨大圧電効果の“鍵”となる大きさがナノメートルレベル(1nmは10億分の1m)のナノサイズ極性領域と呼ばれる局所構造を持っている。

 しかし、時間と共に揺らぎ、温度で大きく変化するナノサイズの局所構造を調べる分析手法は、まだ確立されておらず具体的な構造や機能はよく分かっていない。

 両大学の研究グループは、鉛(Pb)・マグネシウム(Mg)・ニオブ(Nb)・チタン(Ti)の酸化物である代表的なリラクサー強誘電体「PMNT」のナノサイズ極性領域の局所的運動を光を使った「角度分解偏光ラマン散乱分光法」と「広帯域ブリルアン散乱法」という2つの検出手法によって解明することに成功、PMNTのナノサイズ極性領域の構造について新しい知見を得た。

 このナノサイズ極性領域の検出手法は、リラクサー強誘電体の材料開発のほかセラミクスやナノ粒子などにも広く適用できる可能性があるという。

 リラクサー強誘電体は、これからの機能性材料の一つとして注目され、他の元素を添加してナノサイズ極性領域の制御を行う研究も行われており、超高感度な医療機器用の超音波振動子や、今の電解コンデンサーに代わる大容量コンデンサーなどが実現できるものと見られている。今回の成果について研究グループは「ナノサイズ局所構造の評価に役立つことが期待される」といっている。