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脳の聴覚部位か視覚部位を使うかの判断は、脳波の位相差が鍵を握る:筑波大学/北海道大学/九州大学

(2017年3月13日発表)

 筑波大学システム情報系の川崎真弘助教らの研究グループは3月13日、人間の脳活動で発生するシータ波(4〜7ヘルツ)とアルファ波(9〜12ヘルツ)のタイミングのズレである位相差が、視覚活動か聴覚活動かの選択に大きな役割を果たしていることを発見した。

 これまでは脳が必要な情報を選択するときに、脳部位間に様々な周波数の脳波リズムで同期するネットワークがあるといわれていたが、メカニズムはわかっていなかった。

 測定には男女14人の健常者(平均年齢27.9歳)に参加してもらい、外部の電気ノイズなどを遮断したシールド内で、それぞれ頭に64個の電極を装着し、視覚と聴覚の2つの作業課題を与えて微弱な脳波を調べた。

 視覚作業はパソコン画面に表示された25個のマス目の中の円の位置を記憶し、画面に現れる矢印に従って頭の中で繰り返しイメージ操作をした。聴覚作業はイヤホンから流される数字を記憶し、次々に出題される数字を暗算で繰り返し足し算した。

 その結果、視覚課題、聴覚課題ともに、前頭のシータ波とアルファ波の位相が同期した。

 両課題の違いを脳がどのように表現しているかを解明するために、シータ波とアルファ波の位相の関係図を作成すると、両課題間では位相関係のズレ(位相差)があることがわかった。この位相差は、独自の数理モデルによる理論曲線とも一致した。

 シータ波とアルファ波の位相差が、脳の視覚と聴覚のどちらかを選ぶことに重要な働きをしていることが裏付けられたとしている。

 これまでいわれてきた日常の脳の機能は、脳のある部位と複数の脳波リズムが協調して働くと見られていたが、この研究によって脳波リズムの位相差も重要な意義を持っていることが見つかったとしている。