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養鶏による温暖化ガスの排出量は、従来比35%少ない:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年3月6日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は3月6日、鶏ふんから排出される温室効果ガスの一酸化二窒素(N2O)を調べ直したところ、従来より年間64万t少なかったと発表した。これは二酸化炭素に換算して35%減少したことになる。20年前と比べ現在の養鶏は環境への負荷が大幅に低減されているとみている。

  温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)やメタンガス(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などがある。日本の排出量は約13億2100万tで、主に化石燃料などから排出されている。しかし発生量は少ないものの温室効果への寄与率が大きいのが、メタンガス(二酸化炭素の25倍)と一酸化二窒素(同約300倍)である。

 農業分野では、これらのメタンガスや一酸化二窒素が水田や家畜の排せつ物、牛のゲップなどから排出され、中でも一酸化二窒素ガス発生量の半分以上が畜産の排せつ物と推定されていた。

 農研機構は、家畜や家禽(かきん(鶏))が1日1頭当たりに排出するふん尿や窒素、リン、カリウムなどの栄養素の排せつ量原単位を、最新のデータを使って試算し直した。

 その結果、現在の排せつ量原単位は20年前のデータによって計算されたもので窒素の量が過大に見積もられていた。最近は育種による鶏の改良、栄養・飼養管理技術の改善などによって窒素の利用効率が高まり、二酸化炭素換算で一酸化二窒素が年間64万tも減少していた。現在の養鶏は環境への負荷が少ないことが裏付けられた。

 農研機構は、牛や豚などの他の畜種でも排せつ量原単位を調べ直し、改定を行いたいとしている。