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運動リズム学習で、3つの脳波が同期することを発見 :筑波大学

(2017年2月22日発表)

 筑波大学システム情報系の研究グループは2月22日、リズムを繰り返すことによって、人の前頭と聴覚野と小脳でベータ波の同期が増加することを発見したと発表した。音楽学習やダンス学習などの効果の検証や、ベータ波を誘発させることで新たな学習方法の提案につながるものとみている。

 文部科学省は、ロックやサンバなどの軽快なリズムで全身を弾ませるリズム学習を、2011年から小学校で、翌年から中学で必修科目として導入した。このリズム学習が脳活動にどのように影響するかの基礎研究として取り組んだ。

 これまでリズムによる個別の脳部位の研究はあったが、前頭と聴覚野、小脳の間のネットワーク活動やリズム学習との相関は不明だった。 

 測定に参加したのは20歳代の男女14人。イヤホーンでリズムを聞いて記憶し、2秒後にそのリズムを再現する課題を繰り返し、微弱な脳波を外部の電磁波を遮断するシールド室内で測定した。

 これによってリズム再現の高いグループ(学習が不要)と低いグループ(学習が必要)に分けられた。低いグループの聴覚野と小脳のベータ波の強さは、リズム学習が必要な人ほど増加することがわかった。

 さらに「前頭と聴覚野」、「聴覚野と小脳」は、リズム学習が進むにつれてベータ波の出方が増加した。リズム運動学習によって3つの脳のベータ波がネットワークとして同期して働いていることが特定できた。

 前頭は脳の最高中枢で記憶に関連し、聴覚野は音の処理を、小脳は身体で覚える運動学習の働きがある。同大ではリズム学習効果を知るために、音楽家やダンサーなどのエキスパートの脳活動と比較した研究が必要としている。