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中分子や高分子を貯蔵できるナノカプセルを開発―バイオ医薬品などを内部に封入して蓄えることが可能に:産業技術総合研究所

(2017年2月7日発表)

今回開発したナノカプセルの構造図
大きさの異なるアミノ酸や糖、脂肪酸を用いることで内径サイズを制御する。

 (国)産業技術総合研究所は2月7日、中分子や高分子を内部に封入して安定に貯蔵できる超微細なナノカプセルを開発したと発表した。

 ペプチドやたんぱく質といった中分子や高分子を封入できる内径が5~40nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)迄のさまざまなナノカプセルを開発したもので、天然由来物質の安価なアミノ酸、糖、脂肪酸を原料にして従来のナノカプセルに比べて格段に少ない工程で量産することができる。産総研は「機能性化粧品、産業用酵素、バイオ医薬品などを蓄える包装剤などへの応用が期待される」といっている。

 近年、分子量が数千から数万の中分子、数万から数十万の高分子が医薬品や機能性化粧品などの有効成分として、また産業用酵素として注目されており、それらを超微細なナノカプセルに封入して貯蔵する技術が求められている。

 そのトップバッターともいえるのが生体の細胞膜と同じ材料で作られたリポソームと呼ばれるナノカプセルで、既に化粧品などを封入するのに実用化されている。しかし、低分子には優れた貯蔵機能を示すものの課題である中分子、高分子に対しては相当量がナノカプセルの表面に吸着されてしまい効率的に封入するのが難しい。

 今回の成果は、その壁を破り中分子・高分子用のナノカプセルを実現したもので、内径のコントロールを原料に用いるアミノ酸や糖の大きさによって行い内径5~40nmのナノカプセルを一度の合成で数十g作れるようにした。

 得られたナノカプセルは、超微細なチューブの形をしており、中分子や高分子を混ぜるだけでその90%以上をチューブの中に封入できるという。

 この方法では、ナノカプセルの外周に配置されるアミノ酸が大きいほど内径サイズが小さくなり、逆にアミノ酸が小さいほど内径サイズが大きくなる。

 研究グループは、得られたナノカプセル内にたんぱく質を封入したらどれだけの期間安定に貯蔵できるか調べているが、分子量10万の酵素(クエン酸合成酵素)を内径20nmのナノカプセルに封入した場合で4週間経過後も90%以上の触媒活性が保持されていることを確認している。

 たんぱく質由来や生物由来の物質を主成分とするバイオ医薬品には、ペプチド医薬、たんぱく医薬、核酸医薬、抗体医薬などがあるが、中でも世界市場が急拡大しているのが抗体を成分とする抗体医薬品。しかし、分子量が数十万と大きい抗体は、会合凝集しやすく、その抑制が大きな課題になっている。産総研は「内径が20nmより大きなナノカプセルを用いれば抗体のような極めて分子量の大きなたんぱく質を安定化する効果も期待できる」といっており、今後企業と連携して抗体医薬品のカプセル化・安定化の検証を行う予定にしている。