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LED照明に対応した高輝度で残光時間の長い蓄光材料―超高層ビルの安全誘導標識などに有用:産業技術総合研究所/立山科学工業

(2017年2月6日発表)

 (国)産業技術総合研究所は2月6日、LEDの照明に対応した高輝度で残光時間が長い蓄光材料を、立山科学工業(株)と共同で開発したと発表した。明るさは従来品の約3倍、残光時間は約2倍ある。照明のLED化が進んでいる超高層ビルの停電時の避難誘導などへの利用に有効としている。

  停電時などに蛍光を発する蓄光材料は安全誘導標識などに広く活用されている。ただ、最近は省エネ化で室内照明が蛍光灯からLED照明へ置き換えが進んでおり、紫外光を含まないLED照明では残光輝度や残光時間の低下問題が浮上している。

  蛍光体材料は金属組成の精密な制御が極めて重要な材料だが、研究グループは今回、金属有機化合物を用いた化学溶液法により、蓄光材料への異種金属イオンの注入(金属イオンドーピング)を精密に制御、また合成プロセスも工夫し、高性能・高機能な蓄光材料の開発に成功した。

  作った新材料に波長460nm (ナノメートル、1nmは10億分の1m)のLED光を照射し性能を調べたところ、照射停止10分後の輝度は市販蓄光材料の約3倍、照射停止後一定輝度までの減衰時間を測る残光時間のテスト結果は、市販材料が2時間だったのに対し新材料は4時間と、2倍長かった。

  研究グループはさらに、産総研独自のコーティング技術である光有機金属分解法(光MOD法)と、今回作った蓄光材料・金属有機化合物とから成るハイブリッド溶液を用い、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂基板上に蓄光材料をコーティングして高輝度蓄光シートを作製した。

 このシートは耐熱性・耐候性に優れるといった特長があり、安全誘導標識をはじめ交通・モバイル機器など広範な利用が期待できるとしている。