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L型非定型BSEも経口感染―汚染飼料の大量投与で:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年1月18日 発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は1月18日、脳がスポンジ状になって死に至る牛の病気「牛海綿状脳症(BSE)」で従来の定型BSEとは異なるL型非定型BSEも、病原体に汚染された飼料を食べることで発症することを初めて確認したと発表した。ただ、確認された事例は汚染飼料を大量投与した場合のみで、通常の飼育環境で経口感染するリスクは極めて低いと同機構はみている。

 BSEに感染した牛は1986年に英国で初めて発見された。動物がもともと体内に持っているプリオンと呼ばれるたんぱく質に異常が起きて脳や中枢神経系に蓄積して発病、身体を震わせたり起立不能の症状を示したりして最終的に死に至る。その後、この異常プリオンに汚染された牛肉を食べた人間にも感染したことから大問題になった。

 このとき問題になったBSEは定型BSEと呼ばれるタイプだったが、2003年以降にこれとは別の非定型BSEが確認された。非定型BSEにはH型とL型の二種類があることがわかっているが、科学的に未解明な部分が多く経口感染するかどうかは未知数だった。

 今回、同機構はL型を発症した牛の脳を他の牛に飼料として与えた結果、感染・発症したことを初めて確認した。50gの脳を牛に経口投与してから7年4カ月後に脳内に異常プリオンの蓄積が見つかった。ただ、1g、5g、10gの脳を経口投与した牛では、4年から7年経った後の検査でも異常プリオンの蓄積は確認できなかった。

 L型の経口投与で起立不能が確認された牛は16頭中の1例で、死亡時の年齢は7歳だった。そのため農研機構は、この発症例がL型の異常プリオンを経口投与したこととは無関係だった可能性はぬぐい切れないとしながら、異常プリオンの体内分布などから見て経口投与による可能性が高いとみている。

 H型も含む非定型BSEは主に8歳以上の老齢牛に発病、世界で110例ほどの発症例が、また日本では2006年に14歳の老齢牛1頭にL型が発症したことが確認されている。