[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

虫歯だけじゃない?お口の病気。

(2017年11月15日)

 いきなりですが、クイズです。わたしたち人間には「歯」は何本あるでしょうか? 実は年齢によって違うのです。乳歯の場合は20本、永久歯が全てそろうと28本(親知らずを含めると32本)になります。永久歯は虫歯になったり、折れたりして抜けてしまうと、もう生えてきません。そうなると入れ歯を使うことになります。
 では、歯が抜けてしまう原因は虫歯だけでしょうか? いいえ、歯と歯ぐきの間に潜む細菌によってひきおこされる歯周病という病気も、歯が抜けてしまう大きな原因になります。実はこの歯周病、日本では大人の半数以上がかかっていると言われていて、ギネスブックにも「全世界でもっとも蔓延している病気」として掲載されているほど、世界的にも患者さんが多い病気なのです。

 歯周病は、口の中にいる数百種の細菌のうちの一部が原因菌となって発症します。歯ぐき、つまり歯肉がはれたり、出血したり、ひどくなると歯肉が下がるとともに歯を支える骨が溶けて歯の根元が見えてきたりします。そうなると歯は支えを失って抜けてしまう可能性が高くなります。日本歯科医師会では、高齢者になっても、健康で、自分の歯で食事を食べ続けられるよう80歳で20本の歯を残そうという目標を掲げていますが、この歯周病にかかってしまうと、それも難しくなってしまうかもしれません。

 でも、しっかり対策すれば重症になることはありません。原因菌はプラークと呼ばれる歯垢に多く住み着いているので、それらをしっかり落とせば予防に大きな効果があります。歯磨きはもちろん、デンタルフロスなどを使って歯と歯の隙間のプラークをしっかり落としましょう。そして、定期的に歯医者さんに診てもらうことも大切です。
 加えて歯周病は、糖尿病、早産、動脈硬化、心臓病、メタボリックシンドローム(メタボ)などの全身疾患にも影響を及ぼすことが研究によってわかってきました。したがって歯周病を予防することはこれらの疾患を予防することにもつながってくるのです。

 ふだんあまり気にしない口の中のことですが、これを読んだらちょっとだけ気にしてみてくださいね。

 

ねこたけ(ペンネーム)
 役に立つこと、立たないこと。いろんなことがあるけれど、とにかく「知らないコト」を「わかった!」にたどり着くまであれこれ考えるのが好き。得意分野は「キッチンサイエンス」。身近な「科学」を、わかりやすくお伝えします。