[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

私たちはいつごろから電気を使うようになったのだろう?

(2016年6月29日)

 家庭には、発電所から電気が送られてきます。私たちは、コンセントにプラグを差し込んでその電気を取り出し、テレビ、エアコン、照明器具、冷蔵庫、掃除機、炊飯器などを使っています。スマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機などは、中に入れた電池から電気を取り出しています。電気は、私たちの暮らしをあらゆるところで支えているので、もし電気がなくなったら?と考えるとゾッとします。

 その電気を、私たちはいつごろから使うようになったのでしょうか?

  電気のことを最初に考えたのは、2500年ほど前のギリシャの哲学者タレス(前624ごろ-546ごろ)だといわれています。タレスは、「こはく(木のやにが固まって宝石のようになったもの)」をこすると羽毛やゴミなど軽いものを吸いつけることに気づいていました。これは、私たちが知っている静電気のはたらきですね。こはくをギリシャ語で「エレクトロン」というので、これがのちに電気を意味する「エレクトリシティ」になりました。

 17~18世紀になって電気についての研究が進み、こはくに羽毛やゴミが吸いつくのが電気のしわざだということがわかってきました。

 1746年には、オランダのミュッセンブルクが、ライデンびんという電気をためるびんを作りました。ただし、ライデンびんには電気をためることはできても、使えば一瞬のうちになくなってしまいます。

 流れつづける電気(電流)は、1800年にイタリアのボルタによって初めて取り出されました。ボルタは、2つの金属の間に塩水でぬらした紙や布をはさんだものをたくさん重ねて電流を発生させる「ボルタの電堆(でんたい)」というものを発表しました。これが電池の始まりで、私たちが使っている乾電池も同じ原理で電流をつくりだしています。ボルタの電堆によって、長い時間にわたって電流を取り出すことができるようになりました。

 1831年、イギリスのファラデーは、電線を巻いたコイルの中に磁石を出し入れすると電流が生まれることを発見しました(※)。この現象を「電磁誘導」といい、電線と磁石があれば電流をつくれることが明らかになりました。この発見によって、やがて発電機が登場します。

 発電所をつくり、そこで起こした電気を家庭などに送るしくみを最初につくり出したのは、アメリカのエジソンです。1882年、エジソンはニューヨークにつくった火力発電所から、電気を送り始めました。自分が発明した電球をたくさんの人に使ってもらうためです。日本で初めて発電所がつくられ、家庭に送電されるようになったのは1887年のことです。

 乾電池を発明したのは日本人です。1887年、屋井先蔵が持ち歩いても液がこぼれない電池(=乾電池)を発明しました。

 人類がコンセントや乾電池から電気を取り出して使えるようになってから、まだ130年ほどしか経っていないというのは、ちょっと意外ですね。このことは、電気をめぐる科学技術が、この短い年月の間に、いかにめざましく進歩したかということも示しています。

 

(※)アメリカのヘンリーが先に電磁誘導を発見していたが、発表したのはファラデーが先だった。

 

上浪 春海(うえなみ はるみ)
大学は文系だが、子どものころから理科が好き。1980年ごろから今日まで、科学雑誌や図鑑、絵本、Webコンテンツなどで身近な科学や最新科学の紹介記事を書いてきた。専門用語をなるべく使わず、誰もがわかりやすい、面白いと感じてくれるような文章を心がけている。