[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

ぬるいシャンパンの栓を抜くと青い雲が出現!

(2017年11月01日)

超高速度撮影ができるカメラを用いて、6℃(写真a)、12℃(写真b)、20℃(写真c)に調整したシャンパンの栓を抜いた瞬間の瓶の口の周辺を撮影したところ、20℃のシャンパンのみ、青みがかった雲が発生することが確かめられた。

 パーティーで飲まれることの多いお酒のシャンパンは、4~8℃に冷やすと美味しいといわれています。ところが、20℃ぐらいのぬるいシャンパンの栓を抜くと、ほんの一瞬ながら、瓶の口の周囲に青い雲が発生することが、シャンパンの産地として知られるフランス・シャンパーニュ地方にあるランス大学の研究グループによって明らかになりました。

 発砲酒であるシャンパンには炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んでいるため、瓶の中の圧力は高くなっています。十分に冷やしていても、栓を抜くと瓶の中のガスが一気に噴出します。時にはシャンパンも噴き出すことがあるぐらいの圧力になるのですから、20℃ぐらいの温度だとシャンパンが膨張する分、瓶内部の圧力はより高くなっているはずです。そこで栓を抜くと高圧だった瓶内部の圧力が急激に低下。断熱膨張と呼ばれる現象により、圧力の低下に伴って気温も低下して、マイナス90℃まで下がるというのです。
 ここまで急激に温度が下がると、シャンパンに含まれる二酸化炭素まで一瞬で凍ってしまい、ドライアイスの微粒子が発生します。すると瓶の周囲に差し込んだ光が散乱して、空が青く見えるのと同じ原理で、ほんのり青く見える雲が発生するというのです。
 ただし、理論的に青い雲の発生が予測されても、ぬるいシャンパンをあけたときに青い雲が発生するのはほんの一瞬でしかありません。そのため研究グループは1秒間に1万2000回もシャッターを切ることができる超高速度撮影カメラを用意して、6℃、12℃、20℃のシャンパンの栓を抜いた瞬間の瓶の口の周辺の撮影に挑戦。その結果、6℃と12℃の時は白い雲が発生しただけだったのに対して、20℃の時はほんのり青みがかった雲が発生することが確かめられました(写真a~c)。

 シャンパンの栓を抜いて青い雲が発生するというと、自分でも見てみたいと思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、20℃のシャンパンを開けて青い雲が発生するのは1000分の2~3秒ほどの一瞬でしかありません。肉眼で確認することはまず不可能なので、自分で試すことはやめたほうがよいでしょう。

(注意)シャンパンはお酒です。20歳未満のお酒の購入や飲酒は法律で禁止されています。

 

【プロフィール】
子供の科学(こどものかがく)
 小・中学生を対象にしたやさしい科学雑誌。毎月10日発売。発行・株式会社誠文堂新光社。
最新号2017年11月号(10月10日発売、定価700円)では、「ロケット」を特集。現在のロケット技術はどこまで進んでいるのか、これからのロケット開発はどうなるのかなど、ロケットの最新情報を紹介。他にも、ピアノの音が出るしくみに迫る記事や、KoKa読者の素顔がわかっちゃう「KoKa読者白書」など、読み応えのある記事が満載。別冊付録には、世界のロケットミニ図鑑も付いているよ。
記事執筆:斉藤勝司
http://www.kodomonokagaku.com/