[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

携帯電話の通信網を利用した 広域監視ドローンの実証実験に成功!

(2018年5月01日)

 報道や災害調査など、さまざまな分野でドローンが大活躍中です。ドローンについてはいまさら説明の必要はないかもしれませんが、電気モーターで動くプロペラが4~8個ついた無人機です。各種のセンサーやジャイロを内蔵しているため、安定した飛行ができ、上空からブレのない鮮明な動画を撮影し、リアルタイムで送信することができます。
 さて、このようにたいへん便利なドローンですが、少し問題もあります。飛行そのものは自律飛行といって、GPSを利用して設定したコースを自動的に飛行させることができるのですが、電波の届かない場所まで飛んでいくと、カメラの画像を送ることができません。
 そこで、NEDO、KDDI、テラドローン、セコムは、KDDI開発のスマートドローンプラットホームというシステムを利用して、遠く離れたところからでもドローンの操作ができる広域監視システムを開発し、実証実験に成功しました。
 このシステムは、携帯電話やスマートフォンが使っている第4世代のモバイル通信ネットワーク4G LTEを使って、ドローンの運航管理・監視カメラの操作などを行うものです。モバイル通信ネットワークを使うため、目視できないような距離にあるドローンでもコントロールできます。
 実証実験では、8個のプロペラを持つドローン4機に、高感度カメラ、赤外線カメラ、LEDライト、スピーカーを搭載し、離れたところにある運航管理室から、実験場所の上空をパトロールさせました。使用した4機のドローンのうち、2機は高い高度から広い範囲を監視し、残りの2機は低高度で巡回します。
 不審な人物を発見すると、低高度のドローンが駆けつけて、不審者の映像を運航管理室に送ります。赤外線カメラを搭載しているため、夜間でも監視を続けることができます。また、地上に向けてLEDライトを照射して明るく照らしたり、スピーカーを通して不審者に呼びかけることもできます。
 モバイル通信ネットワークは、日本全土のほとんどの場所で使えますから、全国どこでも、バッテリーが持つ範囲で、ドローンの広域飛行が可能になります。このシステムは、監視や防犯だけでなく、災害の継続監視などにも役立てることができます。
携帯電話の通信網を使っているため、遠く離れたところからでも、ドローンの飛行を管理できます。監視カメラの映像をリアルタイムで確認したり、不審者に投光したり、音声で注意を促すこともできます。
画像提供:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

 

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記事執筆:白鳥 敬
http://www.kodomonokagaku.com/