[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

影が映らないプロジェクションマッピング

(2019年1月01日)

図1・投影結果の比較
通常のプロジェクションマッピングと比較してみると、新方式では影が映らないことがわかる。©️大阪大学大学院基礎工学研究科教授 佐藤宏介

 屋外イベントなどで大活躍のプロジェクションマッピングですが、これまでは、プロジェクターとスクリーンの間に物体が入ると影が映ってしまうのが難点でした。これを解決しようと、大阪大学大学院基礎工学研究科の佐藤宏介教授・岩井大輔准教授らの研究グループは、投影された面に触れても、ほとんど影ができない、新しいプロジェクションマッピングの技術を開発しました。
 いったいどうやって影を消しているのでしょうか。そのヒントは、医療現場で使用される照明「無影灯」にあります。この灯火は、多数の光源を持つ照明器具で、幅広い方向から光を当てるため、手術中の医師が臓器に触れてもほとんど影ができません。
 研究グループはこの原理に着目して、影の映らないプロジェクションマッピング技術を開発しました。
 この技術は、ASKA3Dと呼ばれる特殊な光学素子、投影面となる対象物、投影される対象物の鏡像(左右逆)になっているダミー、複数のプロジェクターから構成されています。実験で使った装置は、左右2か所のプロジェクターからダミーの対象物(実験では鏡像のウサギの模型)に映像を当て、光学素子を通してダミーとは反対側に置かれたターゲット(ウサギの模型)に多方向から映像を映します。こうして、手で触れても影の映らないプロジェクションマッピングを実現しました。
 ASKA3Dは、プレート内部に2枚の鏡が直角に配置された小さな鏡を多数配置したもので、空中に映像を映し出すことができます。
 この新しいプロジェクションマッピングの表示技術を使うと、これまでにない映像表現や不思議な感覚を味わえる広告表示ができます。さらに、手術中にガイダンス映像を患部表面に映し出すといった、手術支援などに活用できると、研究者は考えています。

図2・影を映さないしくみ
 
 

光学素子の上にあるダミーに映像を映すと、3Dプレートを通して、多方向から対象物に投影される。以下のURLから動画を見ることもできる。©️大阪大学大学院基礎工学研究科教授 佐藤宏介
 https://www.youtube.com/watch?v=xrKRMNlvkVg&feature=youtu.be

 

 

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記事執筆:白鳥 敬
 http://www.kodomonokagaku.com/