[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

巨人の懐にいだかれて  “ハロー、ジュピター”

(2018年4月15日)

Juno on Perijove 10(10回目の木星近点通過!
ジュノーカム画像と探査機のコラージュ)2017/12/16
© NASA/JPL -Caltech/SwRI/MSSS/Kevin M. Gill

 地球の10倍もの大きさの巨人惑星「木星」、その懐奥深くまで2016年に飛び込んだのが探査機JUNO(ジュノー)だ。その特徴とミッションについては2016年6月15日の本コラム「もっと光を!ジュノー木星へ」で書いた。(この時には探査機名を「ユノー」と書いたが、その後の国内記事では「ジュノー」が多いので、今後はジュノーで表記する)

 それから1年半。ジュノーは巨人惑星「木星」に何を見たかを振り返ってみよう。

 ジュノーは北極/南極を縦に輪切りするような周期53日の「極軌道」から木星を観測する初めての周回機で、一番木星に近づくと表面から約4000kmをかすめ飛ぶ。
 このような軌道の特徴を生かしながら、搭載した様々なセンサで木星の詳細を調べ続けている。特にジュノーカムと呼ばれる広報用のカメラが送り届ける画像はいままで見たこともない木星の驚きの素顔を続々と届けている。

■木星の気象現象ともいえる雲の激しい動きは、重力の精密な測定から、深さ3000kmにも及ぶことが明らかになった。「気象層」ともいえる領域の質量は木星全体の1%にも達する。(地球では対流圏と言われる高度10km強までが激しい動きのいわゆる気象の範囲、その質量は地球全体から見れば百万分の一と、ごくわずかでしかない)

■木星のオーロラは地球の何百倍ものエネルギーをもった広大な広がりがある。(地球そのものの大きさを越える)

■大赤班と呼ばれる地球の直径より巨大な南半球の渦は、ここ二百年で大きさが劇的に小さくなり、楕円形から円形に変化している。この渦は垂直方向(高さ方向)にひき延ばされ、色が濃いオレンジを帯びてきている。これは物質が高い高度で太陽の紫外線を受けてより赤化しているのではなかと考えられている。

■磁場はこれまで予想された値より強く、地球の10倍をも超えている。しかも均一ではない。場所により大いに強弱がある。磁場発生のメカニズムに迫る発見が期待されている。

■北極と南極の渦の様相は大いに異なっている。北極には7000kmを越える大きさの渦があり、そのまわりに直径4000kmを越える8個の渦がとりまいている。(画像参照)赤道付近にある帯状の雲とは全く異なる。

“赤外線オーロラマッピング装置(JIRAM)”による北極の画像 雲の上端から深さ70kmまでを見通している(明るい場所が熱放射 の多い、つまり温度の高い下層を見ている © NASA/JPL-Caltech/SwRI/ASI/INAF/JIRAM

 

「1機では足りなかった」(研究者の言)

 1970年代末にフライバイ(通り過ぎる)観測を行ったボィジャー1,2号。1995年から8年にわたって木星を周回して観測を続けたガリレオ。私たちはこれらの観測を通じで“木星はわかった・・・”そんな感じを持っていたが、この巨人はまだまだ謎を秘めていた。
ジュノーの観測はこれからも続く。

 

 

◆つくばエキスポセンターでは、プラネタリウム番組「ハロージュピター~木星、新たなる冒険の旅~」を5月27日(日)まで上映しています。新しい探査機によって木星の詳細な姿が分かってきました。ガリレオ・ガリレイが木星を望遠鏡で観測し、4つの衛星を発見したことで世紀の大転換を迎えます。さあ、木星とガリレオ衛星を巡る旅へ出かけましょう。
〈詳しくはこちら〉
http://www.expocenter.or.jp/?page_id=47

 

 

小笠原 雅弘(おがさわら まさひろ)
 NEC、チーム「はやぶさ」メンバー。軌道系、航法誘導系担当、特にイトカワへの着陸に使われたターゲットマーカやフラッシュランプを手がけた。1985年にはじめてハレー彗星へ旅した「さきがけ」をはじめ、スイングバイ技術を修得した「ひてん」、月のハイビジョン映像を地球に送り届けた「かぐや」など日本の太陽系探査衛星にずっと携わってきたエンジニア。
現在、NEC航空宇宙システム勤務。