[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

ザリガニのからだのふしぎ

(2016年8月01日)

    川や池でつかまえたり、教室で飼育したりと、私たちにとって身近な生き物のザリガニ。日本では食用の習慣はあまりありませんが、フランスやアメリカなどでは食用されていて、とくに北欧では「ザリガニ・パーティー」というイベントもあります。これは、スウェーデンを発祥とする北欧諸国で、8月初めにザリガニ漁が解禁になることにちなんでたくさんのザリガニを食べるというイベントです。ザリガニを食べるって、なかなか想像つきませんね。

   そこで、食用のザリガニを食べてみました。頭は大きくても身はちいさい、しかも甲羅が硬くて食べにくい…ですが、ちゃんと美味しく食べられます。そして不思議なことに、たまにザリガニの頭のなか、目の後ろ(消化管の一部があります)のあたりから白くて丸くて固い粒が2つ出てきます。大きさは1cm程度で、ひっくり返すとシイタケのカサのような形をしています。これは一体なんなのでしょう?

   実は、これは「胃石(いせき)」といって殻に必要なカルシウムをためているものです。エビ、カニといった甲殻類(こうかくるい)は脱皮をして大きくなります。脱皮をしたすぐの殻はやわらかくてふにゃふにゃなので、敵におそわれたらひとたまりもありません。少しでも早くもとの硬さに戻すために、胃石にためておいたカルシウムを血液中に溶かして新しい殻に補給し、数日かけて固い殻を作りあげるのです。

12

   胃石は、古い殻のカルシウムを血液中に溶かしながらためて、脱皮に備えているものです。したがって、胃石があるザリガニは、脱皮直前といえます。体内で、カルシウムを無駄にせず、上手に循環させているのですね。

   ちなみにこの胃石、江戸時代には「オクリカンキリ」と呼ばれて、目の病気などに効く薬として重宝されていたのだとか。ザリガニは、古い時代からも私たちの生活に身近な存在だったことがうかがえますね。

 

 

 

ねこたけ(ペンネーム)
役に立つこと、立たないこと。いろんなことがあるけれど、とにかく「知らないコト」を「わかった!」にたどり着くまであれこれ考えるのが好き。得意分野は「キッチンサイエンス」。身近な「科学」を、わかりやすくお伝えします。