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わかる科学

コンドルはほとんど羽ばたかずに飛んでいた!!

(2020年9月04日)

空を飛ぶコンドル。(©jmarti20,Pixabay)

 コンドルは、飛ぶ鳥の中で最も体重が重いことが知られています。大きな個体では体重が約15kg、翼を広げると3mほどにもなります。エサは主に動物の死肉です。ところで、羽ばたきながら飛行するにはたくさんのエネルギーが必要になりますが、コンドルのような大きな鳥は多くのエネルギーを消費しながら飛んでいるのでしょうか? 

 このほどスウォンジー大学(イギリス)やマックスプランク研究所(ドイツ)を中心とする研究チームは、コンドルが羽ばたくのは飛翔時間の1%ほどであることを発見しました。この研究成果は国際誌『米国科学アカデミー紀要』に掲載されています。

 研究チームはバイオロギングという方法でコンドルの飛行の特徴を調べました。アルゼンチンのアンデス山脈に棲む8個体の若いコンドル(9.5~13.9kg)に小型の特殊な記録計をとりつけて、飛行ルートや飛行時間、羽ばたきの回数などのデータを測定しました。なお記録計は一定の時間が経つと自動的にコンドルの体から離脱して落下するようになっており、記録計から発信される電波を頼りに回収することができます。

 回収した記録計をもとに、8個体における合計216時間以上のデータが解析されました。その結果、全飛行時間のうち、羽ばたく時間は平均でわずか1.3%で、残りの約99%の時間は羽ばたかずに滑空していることがわかったのです。飛行中に連続して羽ばたかない時間は98分~317分でした。ある個体は317分間、全く羽ばたくことなく、172kmを一気に飛行していたことも明らかになりました。また羽ばたきの75%は、地面から飛び立つときのものでした。

 さらにコンドルは上昇気流を利用して上空までいき、その後、旋回や滑空しながら、別の上昇気流を見つけ出しながら飛んでいました。その際に、地面に近づきすぎてしまった場合には、羽ばたくこともわかりました。飛び立つときにエネルギーをグッと使い、あとは気流に乗るなどして、羽ばたかずに空を飛んでいたわけです。このように、上昇気流を利用して効率的に上空を旋回することは、エサとなる死肉を探すのに役立っていると考えられます。

 今回の研究により、まだ経験の多くない若いコンドルでも、気流に乗ってエネルギー消費を低く抑えながら飛んでいることがわかりました。コンドルはいったいどのようにして気流の位置を見つけているのでしょうか?研究チームは、次なる謎の解明に向けて研究を進めていくことにしています。

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記事執筆:保谷彰彦

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