[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

これからの10年~我々はどこへ向かうのか

(2017年2月01日)

  2017年1月時点での人類の太陽系進出とこれから
               (小笠原作成)
・水色の領域は2017年時点で達成したミッション
・赤字は2010年代に行われた主な探査
・2020年代の探査目標と、現時点での計画を加えた
・×印は、現在の技術では実現ができないと思われる領域
(経済的な観点でも)
 
  

 1990年代半、小惑星に降り立つことは夢だった

 2000年代半、火星と木星の間にあるセレスや
        ベスタ、遠方の冥王星の姿をま
        近かで見ることはできなかった

 2010年代、 すべてが現実に変わった。 

  ここ50年で積み上げた太陽系を旅する技術の進歩によって、人類が造り上げた探査機は太陽系をくまなく旅することができるようになった。
 太陽系・・・大きさ100億kmもの空間に“フォロンティア”は無くなった。
 そしてこれからの10年、我々はどこへ向かうのだろうか?

 表を見てもらいたい、これは2017年時点での人類はどこまで太陽系に進出したかの「星取り表」というべきものである。地球に一番近い月から、太陽系の一番内側の水星、外縁にある準惑星の冥王星まで人類の手は伸びた。

  惑星の探査方法は段階を追ってより高度なものに進んでいく

 フライバイ    天体のそばを高速で通り過ぎながら観測する

 周回       惑星の周囲を回りながら観測する

 着陸       着陸機が降りる、または一部がタッチする(タッチダウン方式)

 サンプルリターン 表面物質あるは大気を採取して持ち帰る

 有人往復     人間が宇宙船で往復する(月へ行ったアポロ宇宙船のみ) 

  2010年代に入り、ヨーロッパ(ESA)のロゼッタによる彗星核への着陸、「はやぶさ」による小惑星「イトカワ」からのサンプルリターン、大型のメインベルト天体セレス、ベスタへの接近観測(NASAのドーン)、そして冥王星のニューホライゾンによるフライバイと、その捜査範囲を拡げてきた。

  表に、これから2020年代までの計画を加えてみた。

    水星:日欧協力のベピコロンボ計画、
       日本の探査機は「MMO」ヨーロッパは「MPO」

   火星:衛星からのサンプルリターン計画「MMX」
     (本コラム 2016年10月1日 火星の月にかけらをとりに 参照)

   小惑星:地球近傍小惑星からのサンプルリターン「はやぶさ2」
               「OSIRIS-Rex:オシリス・レックス」
       金属質小惑星探査「Psyche:サイケ」
       トロヤ群小惑星探査「Lucy:ルーシー」

   カイパーベルト天体探査:冥王星探査を終えた
               「New Horizons:ニューホライズン」

 2020年代にかけて、これまで調べられた各天体をさらに詳しく、あるいは様々な種族の小天体(有機物を含むもの、金属質、より遠くのトロヤ群)を探る探査が予定されている。これ以外にも米欧は火星を目指した探査を拡大して、中国は月裏側への着陸や月からのサンプルリターンに果敢に挑もうとしている。

 これからの10年、人類はより“深い”新たな太陽系のフロンティアを目指す
       そこにはどんな驚異が待っているのだろう

 

〈拡大図〉

 

 

 

小笠原 雅弘(おがさわら まさひろ)
NEC、チーム「はやぶさ」メンバー。軌道系、航法誘導系担当、特にイトカワへの着陸に使われたターゲットマーカやフラッシュランプを手がけた。1985年にはじめてハレー彗星へ旅した「さきがけ」をはじめ、スイングバイ技術を修得した「ひてん」、月のハイビジョン映像を地球に送り届けた「かぐや」など日本の太陽系探査衛星にずっと携わってきたエンジニア。
現在、NEC航空宇宙システム勤務。