[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

太陽系から最も近い星に惑星発見、あなたが生きている間に詳しい姿がわかる!?

(2017年1月01日)

プロキシマbは、南半球で明るく見える一等星アルファ・ケンタウリの方向にある

 地球以外に生命の存在する天体があるか?という疑問は、だれもが持っているでしょう。その答えを見つけようと、太陽系内の火星や、木星・土星の衛星の探査が行われています。一方、太陽系の外に地球とよく似た惑星がないか探す観測も進められています。

 太陽以外の恒星が惑星を持つかどうかについては、1990年ごろまで確かめることができませんでした。惑星は恒星に比べて小さく、自分で光を出していません。しかも、地球からのきょりが非常に遠いので、そんな天体を見つける観測技術がなかったからです。

 1995年、地球から50光年ほどはなれたペガスス座51番星という恒星に、太陽系外で初の惑星が見つかりました。その後、世界中で太陽系外の惑星探しがさかんになり、次々に太陽系外の惑星(系外惑星)が見つかるようになりました。その数は2016年までに3200個を超えています(2016年5月現在)。

 こうした系外惑星の中には、地球に似ている天体もいくつか見つかっています。といっても、これらの天体は地球から数十光年以上はなれているので、探査機を飛ばし近くまで行って調べることは夢物語でした。

 そんな中、4ヶ月ほど前(2016年8月)に、私たちの夢を大きくふくらませてくれるニュースが伝えられました。太陽系にもっとも近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」に惑星が発見されたのです。「プロキシマb」と名づけられたこの惑星は地球よりやや大きく、岩石でできた惑星とみられ、水が液体として存在できそうな温度であると考えられています。つまり、生命存在の可能性があるということです。

 地球からのきょりは、約4.2光年。木星や土星、海王星などを調べたアメリカの惑星探査機ボイジャー1号の速さで飛ぶと、およそ8万年かかりますが、近い将来には、もっと早く飛べる探査機ができるかもしれません。

 ロシアの大富豪ユーリー・ミリネル氏と英国の宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士らは、光の速度の20%の速さで飛ぶ超軽量の探査機を開発する「ブレイクスルー・スターショット」という計画を発表しています。いつ実現するかわかりませんが、もし、光の速度の20%でプロキシマbへ向かえば、20年ほどで到着できます。探査の結果は光の速度で送られてくるので、単純な計算上はで打上げから25年ぐらいで、この惑星のくわしい姿を知ることができることになりますね。……あなたが生きている間に、その可能性は十分にあるといえそうです。

 なお、「プロキシマb」の主星プロキシマ・ケンタウリは、「アルファ・ケンタウリ(ケンタウロス座アルファ星)」という一等星を他の2つの星とともに構成しています(三重連星)。アルファ・ケンタウリは、南十字星を探すときの目印になる有名な星ですから、南半球に旅行することがあったら、ぜひ見てみましょう。

 

上浪 春海(うえなみ はるみ)
大学は文系だが、子どものころから理科が好き。1980年ごろから今日まで、科学雑誌や図鑑、絵本、Webコンテンツなどで身近な科学や最新科学の紹介記事を書いてきた。専門用語をなるべく使わず、誰もがわかりやすい、面白いと感じてくれるような文章を心がけている。