[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

筑波大学の特徴と研究動向

(2016年9月01日)

   筑波大学は東京教育大学の筑波研究学園都市への移転を契機に「開かれた大学」として発足しました。門やフェンスのない、文字どおりの「開かれた大学」としてだけでなく、学内組織運営においても実質的に「開かれた大学」となっています。筑波大学では部局間の壁が他大学に比べるとはるかに低いのです。教員組織体制も、大人数からなる「講座制」ではなく、少人数の「グループ制」を採用していることから、教員や研究者が共同研究を自由に進めやすい仕組みとなっています。医学、生物学と工学などとの連携が進み、学際的研究が大きく育つことになりました。その主な例を紹介しましょう。

    サイバニクス研究は、筑波大学の特徴である「学際性」が大きく花開いた研究分野の一つです。山海嘉之教授は、人の役に立つロボット技術を開発したいとの熱い情熱から、ロボットスーツHALを開発しました。HALを装着することで、重いものでも楽々と持ち上げられるだけでなく、長時間の運搬作業も楽にこなせるように、人の機能を強化することができます。さらに、病気や怪我で運動機能の障害を負った人のリハビリテーションにHALを活用することによって、大きな医学的効果が得られることが実証されています。サイバニクス研究は、機械工学、情報技術、医学の三分野を統合する新たな学際領域として大きく成長しており、高齢化社会に向けて大きな貢献が期待されています。

(筑波大学サイバニクス研究センター;http://www.ccr.tsukuba.ac.jp/index.html

  「人はなぜ、眠らなければいけないのでしょうか」。この哲学的な疑問に科学的アプローチで答えを見つけようという研究が進められています。実は、生物が「眠る」という現象は、未だによくわかっていないのです。例えば、私たちが日常的に感じる「眠気」の正体すら、わかっていません。そんな素朴な疑問にとどまらず、不眠症や過眠症などの睡眠障害は社会的に大きな課題です。筑波大学では、柳沢正史教授の下、睡眠を学際的に科学する世界でも類を見ない研究センターを組織し、睡眠の謎に取り組む研究を戦略的かつグローバルに推進しています。 

(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構;http://wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/japanese/

   筑波大学は、国立大学としては唯一、芸術系と体育系も抱える総合大学です。先のリオオリンピックでは、本学出身の永瀬貴規選手が柔道 81kg 級で銅メダル、彦坂匡克選手と福岡堅樹選手が男子7人制ラグビーで大健闘するなどの成果を収めました。研究分野としては、例えば感性に関連した各種の研究や実践が進められているほか、アスリートに関する各種データの解析も行われています。また、社会工学系の研究分野ではサービス工学研究が進められています。さらにロボットスーツHALからのデータ、睡眠研究からの脳波データ、介護レセプトデータ、トップアスリートのモーションデータなど、学内には多様なビッグデータが蓄積しつつあります。それを活用しない手はありません。学内の人工知能(AI)に関する学術的基盤技術を集約することで、人材育成、社会貢献に活用できるビッグデータ解析も夢ではありません。本学の計算科学研究センターのスパコン技術をフル活用するほか、つくば地区の各研究機関や企業との連携も深めることで、新たな学際領域の創発を期待しています。

三明 康郎(みあけ やすお)
国立大学法人筑波大学副学長・理事(研究担当)
専門は、高エネルギー原子核・原子核衝突を用いたクォーク・グルオンプラズマの研究。原子核物理学。